高齢者が歩けるのに階段を上れないのはなぜ?原因と必要な筋力・運動

「平らな道は歩けるのに、階段になると急に上れなくなる」
「階段では手すりを強く引っ張っている」
「以前より脚が上がらなくなったように見える」
高齢の親御さまの様子を見て、このような変化が気になっている方もいるのではないでしょうか。
平らな道を歩くことと、階段を上ることでは、身体に求められる動きや筋力が異なります。
階段では、片脚で身体を支えながら、身体を上の段まで持ち上げなければなりません。そのため、平地歩行ができる方でも、股関節や膝まわりの筋力、バランス能力などが低下すると、階段を負担に感じる場合があります。
この記事では、高齢者が歩けるのに階段を上りにくくなる理由と、階段を上るうえで重要な股関節筋力、自宅で取り入れやすい運動について解説します。
歩けるけれど階段を上れないのはなぜ?
平らな道を歩くときは、身体を主に前方へ移動させます。
一方、階段を上るときは、前方への移動に加えて、身体を上方向へ持ち上げる必要があります。
一段上に置いた脚で身体を支え、股関節と膝を伸ばしながら、体重を上の段へ移動させます。
そのため階段では、平地歩行よりも次のような能力が求められます。
- 太ももやお尻などの下半身の筋力
- 片脚で身体を支えるバランス能力
- 股関節や膝、足首の動き
- 脚を段の高さまで持ち上げる力
- 身体を上へ移動させる体力
- 転倒への不安に対処するための安定性
高齢になると、歩行に必要な能力は保たれていても、階段のように負担の大きい動作では筋力が足りにくくなる場合があります。
また、膝や腰への不安、息切れ、転倒への恐怖などが重なり、階段を避けるようになることもあります。
階段を上るときに股関節が果たす役割
股関節まわりには、脚を前後や横へ動かし、骨盤や身体を支えるための筋肉があります。
階段を上る動作では、主に次の働きが重要です。
身体を上へ押し上げる
一段上に置いた脚で身体を持ち上げるときには、お尻の大殿筋や太ももの後ろ側など、股関節を伸ばす筋肉が使われます。
股関節を伸ばす力が低下すると、身体を上へ押し上げにくくなり、手すりを強く引いたり、身体を大きく前へ傾けたりすることがあります。
脚を次の段まで持ち上げる
階段で脚を次の段へ運ぶ動作には、股関節を曲げる筋肉と関節の動きが関係します。
これらの働きが低下すると、脚を段の高さまで持ち上げにくくなり、足先が段に近づきすぎるなど、不安定な動きにつながる場合があります。
骨盤と身体を安定させる
階段では、一時的に片脚で身体を支える場面があります。
このとき、お尻の横側にある中殿筋などが、骨盤や身体が左右に大きく傾かないように支えます。
股関節の横側の筋力は、歩行や階段などの移動動作における安定性にも関係しています。
股関節だけを鍛えればよいわけではない
階段を上るためには股関節筋力が重要ですが、股関節だけを鍛えればよいわけではありません。
一段上に身体を持ち上げるときには、膝を伸ばす太ももの前側の筋力も大きく関係します。
また、足首で床を押す力や、片脚で身体を支えるバランス、股関節・膝・足首の動きやすさも必要です。
そのため、階段を上りにくい方には、次の要素を組み合わせた運動が大切です。
- お尻や股関節まわりの筋力
- 太ももの前側の筋力
- ふくらはぎの筋力
- 股関節や足首の柔軟性
- 立位でのバランス
- 立ち上がりや歩行に関わる動作
「階段が苦手だから階段だけを何度も上る」のではなく、身体の状態を確認しながら、必要な部分を整えていくことが重要です。
階段を上りにくくなる原因全般については、「高齢者が階段を上りにくくなったら」の記事でも詳しく解説しています。
家族が確認したい動作の変化
親御さまに次のような変化がないか確認してみましょう。
- 階段で手すりを強く引っ張っている
- 片方の脚ばかりを先に出している
- 一段ごとに両足をそろえている
- 身体を大きく前へ傾けている
- 脚を上げるときに身体が左右へ揺れる
- 足先が段に引っかかりそうになる
- 階段を上った後の息切れが強くなった
- 階段のある場所を避けるようになった
- エレベーターやエスカレーターを必ず探すようになった
こうした動きがあるからといって、必ず股関節の筋力が低下しているとは限りません。
膝や股関節の痛み、神経の症状、心肺機能、視力、服薬、転倒への不安などが関係する場合もあります。
「筋力が落ちたから」と決めつけず、本人がどの動作を不安に感じているのかを確認することが大切です。
自宅で取り入れやすい股関節まわりの運動
運動を行う際は、壁や安定した椅子など、すぐにつかまれる場所を確保してください。
痛みや強いふらつきがある場合は、無理に行わないようにしましょう。
椅子からの立ち上がり運動
安定した椅子に座り、両足を床につけます。
身体を少し前に傾け、足で床を押しながらゆっくり立ち上がります。その後、急に座らず、ゆっくりと椅子へ戻ります。
この動作では、お尻や太ももなど、階段を上るときにも使われる筋肉を動かせます。
最初は手を使っても構いません。
回数を増やすことよりも、痛みやふらつきがなく、安全に行えることを優先してください。
椅子からの立ち上がりについては、「高齢者が椅子から立ち上がりにくい理由」の記事でも紹介しています。
椅子に座った足踏み
椅子に深く座りすぎず、背もたれに寄りかからない範囲で姿勢を整えます。
片方ずつ、膝を無理のない高さまで持ち上げます。
階段で脚を次の段へ運ぶときに必要な、股関節を曲げる動きを確認しやすい運動です。
身体を後ろへ大きく倒したり、勢いをつけたりしないようにしましょう。
立った状態で脚を後ろへ動かす運動
壁や安定した椅子につかまり、身体をまっすぐ保ったまま、片脚をゆっくり後ろへ動かします。
腰を反らせるのではなく、お尻の筋肉を使うことを意識します。
動かす範囲は小さくても構いません。
腰や股関節に痛みが出る場合は中止してください。
立った状態で脚を横へ動かす運動
壁や椅子につかまり、つま先を正面に向けたまま、片脚をゆっくり横へ動かします。
身体を反対側へ大きく傾けず、安定した範囲で行います。
お尻の横側を使い、片脚で身体を支えるための筋力を確認しやすい運動です。
かかとの上げ下げ
壁や椅子につかまり、両足で立った状態から、かかとをゆっくり上げ下げします。
股関節の運動ではありませんが、階段を上るときに床を押すふくらはぎの筋力も大切です。
バランスに不安がある場合は、必ず安定した支えを使用してください。
階段そのものを練習するときの注意点
筋力をつけるために、実際の階段を繰り返し上ろうと考える方もいるかもしれません。
しかし、階段でふらつく方や足が段に引っかかる方が、自己流で繰り返し練習すると、転倒や身体への負担につながる可能性があります。
実際の階段を使用する場合は、次の点を確認してください。
- 安定した手すりがある
- 階段が明るく、段差を確認できる
- 滑りやすい靴下や履物を避ける
- 荷物を持ったまま行わない
- 疲れているときに無理をしない
- 家族や専門家が近くで確認できる
- 痛みや強い息切れが出たら中止する
階段の練習を始める前に、椅子からの立ち上がりや股関節まわりの運動など、安全に行いやすい内容から始める方法もあります。
運動より先に医療機関へ相談した方がよい場合
次のような症状がある場合は、自己判断で筋力トレーニングや階段練習を始めず、医療機関へ相談してください。
- 急に階段を上れなくなった
- 片方の脚だけに力が入りにくい
- 強い痛みやしびれがある
- 膝や股関節に腫れや熱感がある
- 転倒後から痛みが続いている
- めまいや強いふらつきがある
- 階段で胸の痛みや強い息苦しさが出る
- 医師から運動を制限されている
- 持病の状態に不安がある
出張パーソナルトレーニングは、病気やけがの診断・治療を行う医療行為ではありません。
急な身体の変化や強い症状がある場合は、医療機関で確認することを優先してください。
出張パーソナルトレーニングで確認できること
階段を上りにくい原因は、股関節の筋力だけとは限りません。
Longevity Conditioningでは、ご自宅へ伺い、現在のお身体の状態や生活環境、運動経験、本人の希望などを確認したうえで運動内容をご提案します。
例えば、次のような内容を確認しながら進めます。
- 立ち姿勢や歩き方
- 椅子からの立ち上がり
- 股関節まわりの筋力と動き
- 太ももやふくらはぎの筋力
- 片脚で身体を支えるときの安定性
- 足を持ち上げる動き
- 膝や腰に負担がかかりやすい動作
- ご自宅で続けやすい運動方法
階段だけを繰り返し練習するのではなく、現在の身体の状態に合わせて、日常生活に必要な動きを総合的に整えていきます。
ご家族が同席できる場合は、運動内容やご自宅での注意点を一緒に確認することも可能です。
まとめ
平らな道は歩けるのに階段を上れない背景には、階段で身体を上方向へ持ち上げるための筋力や、片脚で身体を支える安定性が関係している場合があります。
股関節まわりの筋肉は、身体を上へ押し上げる、脚を次の段へ持ち上げる、骨盤を安定させるといった役割を担います。
ただし、階段を上るためには、股関節だけでなく、太ももやふくらはぎの筋力、バランス、関節の動き、体力なども重要です。
自己流で階段だけを繰り返すのではなく、現在の身体の状態に合わせて、安全に行いやすい運動から始めましょう。
高齢の親御さまが階段を上りにくくなったと感じる方や、自宅でどのような運動を始めればよいか分からない方は、体験トレーニングで適した進め方をご相談いただけます。
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高齢者の運動は何から始める?自宅で無理なく続けるためのポイント
参考資料
厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 高齢者版」
Samuel D, et al. The biomechanical functional demand placed on knee and hip muscles of older adults during stair ascent and descent.
Lanza MB, et al. Systematic Review of the Importance of Hip Muscle Strength, Activation, and Structure in Balance and Mobility Tasks.

